飯豊連峰 門内小屋番日記

平成18812日〜815

門内岳避難小屋の管理人を先月同様に、NENの交代要員のため12日〜15日まで入った。この交代を再度、NENに引継ぎ管理期間を終了する20日を過ぎると再び無人の避難小屋となり、豪雪地の短い夏山の期間が終わる。

GPS LOG 4:50ヘッデンは要らない 石転ビ沢上部 実証地砂の流入がある
上から直すということか 桃パパさん 夕方の北股、梅花皮岳 夕方、ユッタリした時間
ガスに夕日が映り込む ハクサンシャジン ホン石転ビ沢出合 谷底に赤い屋根


梅雨明けが遅れた今年だが梅雨明け後は厳しい暑さが続いたが、殊更、12日〜15日の間は暑さが厳しかった。この暑さ対策として昨年同様に、早立ちをすることにした。
暑さ対策として早立ちをする理由は、@荷物が重いのでどうしても時間がかかるので、ユックリと歩きたい。A疲労を避けるためユックリ歩くと長時間屋外に居て直射日光に晒されるのでこれまた疲労と脱水の原因になる。これらを避けるためには、なるべく早い時間帯に高度を上げてしまうことで解決を図る以外方法がない。
今回、私は3時少し前から登り始めたが、それでも滝見場〜扇ノ地神の間はかなり暑さを感じた。

なお、夏季に梶川尾根を登る際は、湯沢峰までは、ジックリ急がず登りたい。また、その先も五郎清水までは先を急がない事。苦しくない程度のスピードで登る方が良い。その先、梶川峰迄は急登が続くが、それでも標高差にして約330mなので頑張りが利く。梶川峰から先は、傾斜は緩み風もでてくる。急ごうと思えばここから先で急ぐ方がよい。
とにかく、湯沢峰迄にバテが出ると、どうにも辛いことになるので、その先、五郎清水までは無理しないようにユックリ登りたい。
水だけでは量、吸収率とも良くないそうで、はやり、スポーツ飲料のようなものが良いとのこと。個人的には、ノンカロリーのモノより登山の場合では、糖分もあった方が良いと思います。

雑学ですが・・・・
経口補水塩(ORS)について。
調剤薬局などで手に入れることができるようですが、スポーツ飲料よりORSの方がナトリウムが多いという。
熱中症の場合、出来ればORSの方が有効なようです。ただ、美味しくないものが多いとのこと。
スポーツドリンクもORS無い場合、LGSとかユニセフ方式と呼ばれるものがあるそうで、水1Lに対し3gの塩、40gの砂糖(出来ればブドウ糖)を溶かしたもの。が有効だそうです。(水に対し0.3%重量の塩と4%重量の糖分)という事のようですね。これで代用ができるようです。(水1Lに対し、塩小さじ1/2 、砂糖大さじ4杯と1/2という感じ)面倒なら、塩0.3%砂糖4%だけ覚えておこう。
バランスは判らないけれど、梅干の握り飯と水の食事はそれなりに意味がありそうな気がする・・・・もっとも熱中症を起こしてしまうと食欲がなくなって食べる事ができないだろうけど。
・・・・・・参考までに。


8月12日(日)
コースタイム
023:35 起床
01:08 自宅発 コンビニで買い物
02:34 天狗平着(420M)
02:50 天狗平発(420M)
03:34 楢の木曲がり(700M)
04:36 湯沢峰着(1,020M) 食事、少し下でヘッデン消す。
04:50 湯沢峰発
05:22 滝見場(1,145M) そろそろ暑さを感じ出す。
06:00 五郎清水(1,370M) 水汲み、食事、無線NEN出ない。OTJが98でやっていると教えてくれた。
06:17 五郎清水発
06:45 三本樺(1,540M) 給水、暑くなってきた。北股沢出合下でV字に割れている。
07:14 梶川峰着(1,700M) 食事
07:28 梶川峰発 NENの無線通じない
08:33 門内小屋着(1,865M) 植生回復実証実験地でしばし観察した後、門内小屋着。

8月15日(水)
12:13 門内小屋発(1,865M) NENが早く到着したので早めに下山。清水を汲んでから稜線に戻る。
12:58 梶川峰(1,700M) 風は無くなるがガスで涼しい。
13:11 五郎清水(1,370M) 水汲み、食事
13:20 五郎清水発
13:57 湯沢峰着(1,020M) とにかく暑い。水がぶ飲みして、ハイカロリーゼリーを飲む
14:02 湯沢峰発
14:28 天狗平(420M) 峡彩山岳会 南山さん、先に下山した松原さんが居られた。冷たい飲物と鮎の塩焼きを頂く。石転ビの事故事案を暫く無線傍受していた。


8月12日(日)
夜中、1時過ぎに家を出る。コンビニに寄って今日の行動食を購入して天狗平に向かう。2時30分を少し過ぎて天狗平着。天狗平には、結構多くの車が停まっていた。テントを張っている方もいるし車中で仮眠中の方もいるので、音に気を付けて出発準備して2時50分に天狗平から歩き出す。
猛暑続きとはいえ、夜明け前の空気は涼しい。
湯沢峰が近づく頃、ヘッデンを消す。既に大粒の汗が滴り落ちているが、皮膚表面はヒンヤリする。湯沢峰でユックリ休んで食事を摂り体温を下げる。
滝見場を通過する頃から直射日光に照らされ始め日光の暑さを感じる。

五郎清水で食事を摂り無線を出してNENを呼ぶがメンチャンで出ないと、OTJが.98でやっている。と教えてくれた。.98でブレイクを掛けるが、こちらの波が弱くて聞こえない様だ。この先の分の水を汲んで出かける。
三本樺で給水。ここから先は、陽の光を遮るものがないので風待ちだ。梶川峰で食事を摂りながらNENを呼ぶが出ない。作業中なのだろう。ここまで来れば、後はノンビリと進む。
梶川峰の植生回復実証実験地を眺めると、梅雨末期と台風の雨のせいか、保護ネットの一部土砂が被っている。上を眺め先回の講習会の時、講師の福留先生の話を思い出してしばし斜面全体を眺める。出水時の水流を考えなければいけないことは判るが、では、具体的にどの場所にどのような石積を組むのか?どこに水を落とすか?具体的イメージが湧かない。まだまだ私の理解度は低い。もう少し規模の小さい所で考えてみたい。など、暫く全体を眺めながら先ごろの座学と実地講習を思い出す。それにしても風が弱い。
ユックリと進む。前回盛だった、ニッコウキスゲ、雪渓が消えたばかりの場所のハクサンイチゲ、イワカガミ、イワウチワの類は既に僅かとなり、マツムシソウ、シャジン、トリカブト等と交代時期の様だ。
やがて、扇ノ地紙まで登りついた。扇ノ地紙迄来ると、東側から門内沢を吹き上げる風、西から頼母木川を吹き上げる風。涼風のカクテルの様だ。汗が一気に引く。プラプラ歩いて門内小屋。

管理棟に行くと、あれ?OII(田邊)さんだ。何でも資格試験前なんだが、家で勉強していて飽きたので気分転換にNEN(石井)さんのサポートに訪れたとのこと。
交代の儀式が、概ね12時30分なのだが暑いので早立ちしたため引継ぎと、WCの問題点、GPアンテナの不調の原因等簡単に打ち合わせてお2人とも、早めの下山。

桃パパさんがヒョコリ姿を現す。2人で冷たいモノを飲んで暫く話をした。あら、kenrokuさんたちと今日ここで宴会だよ。と話すが用事があるので日帰りとのこと。メシを食べてパパさん下山開始。

昼過ぎから続々と登山者が到着する。
時間が早いので、てっきり梅花皮までか。と思うが、暑くて一杯イッパイなのでここで行動中止という方が結構おられた。
福島の中澤さんがNENを尋ねてこられたが既に降りてしまった。後だったが、面倒した土産を頂いた。ありがとうございました。

女性のテン泊単独者(JOさん)が来た。昨晩頼母木ならkenrokuさんご夫妻に会いませんでしたか?とお聞きしたら。それで今日、門内泊りです。とのこと。了解!

14時を過ぎて到着した方から、「カンカン照りの中、登山道で寝ている人が大丈夫だろうか?」との情報があった。
他の登山者にお聞きしても「あの若い、赤のシャツに黒っぽいザックの人ね。」
「途中まで元気だったけど・・・・遅れだして横になってね。」
アッチャ〜・・・。初日からコレかい・・・・どうしようかな?とりあえず、梅花皮小屋のOTJ(関)さんを無線で呼んで相談すると、「直ぐ出られるようなら様子を見てダメならヘリが飛べる明るいうちに何とかした方がよさそうだ。」とのこと。
ザックに水、タオル、冷却用の雪、ビニール袋、ブルーシート、ポカリ、無線機、GPS、もしかしての現地待機用に自分の合羽を放り込んでとりあえず現場に向かうことにした。
扇ノ地紙からホンの少し下った所で情報と思しき登山者が現れた。確認すると本人で頭痛と気持ち悪い状態になり横になっていた。とのこと。現在の状態を聞くとよほど良いようだが、大丈夫ならユックリ歩いてもらうことにして。後から付いていく。何とか大丈夫なようなので、扇ノ地紙で暫く休んで水分補給をしてもらう。その後もユックリと後からサポートして15:12分小屋着。お聞きしたところ、朝6時登山開始とのこと。暑い時間帯を入れて9時間を越える行動時間では大変だ。暑い時間帯、直射日光に晒されるだけで相当に体力は消耗するはずだ。それでも、若い彼は小屋に着いて少し休んでいると直ぐに回復したようだ。今晩は、水分を十分に摂り早めに寝て体力の回復を図り明日起きてから縦走を続けるかどうかを決めた方が良いと話し、くれぐれも充分な水分補給をする様に話した。

上記の方には関係ないけれど、歩き初めて半日以上、小用が無いのは相当に身体に無理がきていると考えた方が良いそうだ。飲んだ水分が全て汗では間に合わないとのこと。・・・・・なんかの本で読んだことがある。
そういう、私も盛夏の山行は行動中殆ど小用に行く事が無い。・・・・・まだ足りないのかな?

今日の朝頼母木小屋を出たKenroku夫妻は門内小屋に宿泊用具をデポして植生回復用のネットを運ぶため御西まで向かった。とNEN、OIIの両氏から聞いていた。どんな遅くなっても、必ず戻るとのこと。と伝言を受けていたがナカナカ姿が見えない。頼母木出発で御西〜門内往復ってエライ遠いよねぇ・・・夕方が近づく頃双眼鏡で北股の山頂を見るとkenroku夫妻と思しき人が見える。暫くして18時近くになり到着。

その後、JOさん、Kenrokuさん、MHさんご夫妻と私の4人で沢山飲んでまさか山の上でカクテルとは思わなかった。お湯で少しのアクシデントがあったけれど。沢山のツマミを美味しく頂きました。酔っ払って暫く石室の上でペルセウス座流星群を探したが思ったほど見えなかった。????アルコールの影響?

MHさん&JOさん 調理中のkenrokuさん ツマミを狙っている?私 うめえ〜ぞ
肝心な酒宴写真はkenrokuさんHMさんご夫妻撮影・・・掲載させて頂きますね。




8月13日(月)
流れ星探しの際呑んだダメ押しが効いたのか朝から目覚ましと格闘。それにしても眠い。腹も空かないので上でゴロゴロしていたらkenrokuさん、MHさんご夫妻がそろそろ下山とのこと。

9時半頃だったか?山形の武田さんご夫妻到着。ここで宿泊とのこと随分早い時間なのに。と思ったら、AM3:00に梶川尾根を登ったとのこと。そうして明日は、エブリまでピストンして門内で2泊目。3日目に下山とのこと。
お話しを伺ったら、奥様が春山合同訓練に参加されており、旦那様も昔バリバリの山屋さん。暫く遠ざかっていたけれど昨シーズンから登山を再開さてれ、山スキーを熱心にされているとのことでした。
色々お話しを伺いましたが、やはり道具とか技術は変わってきても山という安全について何一つ約束されていないフィールドでの登山という行為自体は変わっていないし、月並ですが最低限の基本装備は何か?この点は重量の差はあれど基本的な考え方は時代を超えたものがあると思いました。
軽量化も大事ですが、その為の取捨選択のノウハウの底辺には何か大事な絶対断ち切ることはできない、一本の線があるように思います。武田さんのお話からそんな事を感じました。

今日も非常に暑い日で早々の宿泊を決め込む方が多い。東北以外の方は異口同音に東北の山だからもっと涼しいと思っていたのに・・・・・・。
そう、夏の飯豊はとても暑い。稜線まではどの尾根をとっても容赦ない急登と暑さ。宿泊装備、食料を背負い木の根や岩を掴んでの尾根歩きは厳しい。それでも稜線の花の美しさと2,000前後の稜線なのに伸びやかに広がる草原や花々、雪田草原等登る苦しみに応える風景がある。

どういうワケか今年は虻、ブヨが稜線上にも沢山いる。大体、ブヨなんぞは雪解けの時期の晴れ間(6月頃)に沢スジから、ワ〜ンと沸いて来るものだが、どうにも今年は変だ。夕方ブヨの大群に襲われアチコチぼこぼこになり痒い。私は、蚊、虻は平気なのだがブヨだけは合わない様で刺し跡は半年も残ることも珍しくない。

19:45分頃OTJからダイグラ下部で転滑落事故が発生して捜索隊が入るので位置からして門内が無線ロケが良さそうなので中継を頼むかもしれないので、待機するようにと指示があった。
警察に詰めているQVHが概要を説明してくれた。そうこうしているうちにHZUの大声が聞こえた。指示報告する声の吐息が弾んでいる。どうやら、OTJも波が取れているようだ。救助隊が桧山沢方向へ降りたら波は取れなくなった。この後はHZUさんの管理サイトで近いうち報告があると思います。救助隊の皆様お盆の夜にお疲れ様です。

8月14日(火)
一昨日の宴会と昨日の傍受で5時頃やっと起きる。今日も朝から暑い。今回は暑いため、毎日冷却用の雪塊を2回取りに行く。昨年は1回で済んでいたのだが、やはり暑いということだろう。
6時過ぎ北股岳山頂に多くの人が見える。8時頃からガスが出てくる。8:00少し過ぎた頃、JHφSIZさんが来られる。昨日は梅花皮泊。
無線施設、携帯電話のアンテナ等色々教えていただく。
10:30分過ぎ、峡彩山岳会の松原さん到着される。本隊(沢の無線サポート)
12:30分頃武田さんご夫妻エブリから戻る。満天の星の下、午前3時に出発したとのこと。今日も武田さんご夫妻は午後からノンビリ過ごされる。
高校時代の隣のクラスの斉藤君が門内に到着したが余りに久しぶりで暫く判らなかった。峡彩の松原さんと3人で四方山話から驚くことが判った。世間は狭いものだ。夜は、松原さんと斉藤君と3人で飲んだが斉藤君は疲れからか直ぐに休んだようだ。

8月15日(水)
今日は朝16℃で寒い。ガスで陽もなく西風が冷たい。松原さんが小屋掃除を受け持って頂いた。有難うございます。
雪を摂り、WCの掃除をして暫くした8:40頃、管理棟に居たら、腰から下げた鉈に長靴が見えた。おっ見回りに来たな〜・・・・
旧黒川村の今井(長)さんが頼母木からやってきた。「オ〜ウ!久しぶりだな〜」今井さんもお元気な様子。
ここのところのブヨと虻避けに蚊取り線香を使っていた跡を見て、「何だオメエ〜蚊が居るのか?」
と聞くのでブヨと虻ですよと応えると、驚いていた。
この時期にブヨというのは?もっとも大量のトンボが飛んでいた。彼等はブヨの捕食者であるので間もなくブヨも姿を消すだろう。
NEN(石井さん)が9:30分頃到着した。3時30分頃登り始めたようだ。
私より一足先に峡彩の松原さんは下山していった。今井さん、NENさんと私の3人で少し話しをしてそろそろ下山しようかな?と考えた頃、ハタノしゃんが来られた。ご挨拶だけさせて頂いて、着替えて小屋を後にした。

15時少し前、天狗平に着くと峡彩山岳会の南山さんと、一足先に降りた松原さんが涼んでいた。冷たい飲物と鮎の塩焼きを頂いた。松原さんの無線からOTJが遭難者(怪我人)の状況について報告をしているのが聞こえた。どうやら、石転ビ沢中ノ島の少し下のトラバース地点の様だ。この事案もHZUさんの管理サイトで報告があるだろうと思います。

少し身体も冷えたので、梅花皮荘で汗を流して外の自販機でトマトジュースと思ったら、トマトジュースは無くて類似品は無塩の野菜ジュースだった。出来れば塩分増量のトマトジュースがあればガブガブ飲みたいものだが・・・
ベターな飲物を一気飲みをして帰途についた。
この管理が終わると何だか夏が終わった様な気がする。






トップページに戻る


以前の記録へ戻る